2015年4月入社の就職戦線は、2回戦スタートの号砲が鳴り響いたばかりだ。
大手企業、人気企業の採用はほぼ終息し、主戦場は中堅・中小の企業に移っていく。

だがこれ以降ブラック企業の存在が企業と学生に深刻な機会損失をもたらすのではないかと危惧する人がいた。
リクルートキャリア就職みらい研究所の岡崎仁美所長だ。

第1志望の大手各社に振られ「持ち駒」の尽きた学生たちは、志望職種の幅を広げてなじみのない中小企業について調べ始める。
高い確率で試みられるのが、「企業名+ブラック」や「企業名+評判」などの&検索だ。

 同研究所が、13年3月、社会人と、4月に就業予定の大学生・大学院生を対象に行った調査がある。

ある業種にブラック企業が多いことを知った後、
「就職・転職活動でその業種を調べるのをやめた」
人は社会人だと10.7%なのに学生では46.9%。

逆にもっと情報を得ようと「関連ニュースをネットで検索した」人は社会人が54.6%と半数を超えるのに学生では33.4%にとどまる。
岡崎所長はこう話す。

「『この業種はブラックかもしれない』というだけで行動停止に陥ってしまう。そんな学生が、半数近くいるということです」

ブラック企業」という言葉の急速な広がりとは裏腹に専門家が異口同音に指摘するのは、深刻な事態を引き起こす
「真性ブラック企業」がある一方で「何をもってブラック企業と判断するか」は人によって異なるということだ。
とりわけ、学生が抱く「ブラック企業」像は
「残業が多い」「賃金が低い」「ワンマン社長がいる」
など、一面的で画一的。

就活生と採用担当者を対象に「月にどれくらい残業したらブラック企業を疑うか」を調査したところ、学生は1カ月の残業が20時間未満でも6.1%がブラックを疑うという結果が出た。
もっとも「ブラック認定」が多かったのは、40〜60時間未満。
これでは、日本中の会社がブラック企業だ。

前出の今野さんによれば「真性ブラック企業」とは
「社員を育てる気がなく、労働者を使いつぶす企業」
適正な賃金を得られず、キャリアを積むこともかなわず、心身共に消耗し、重篤なダメージを負いかねない。

「企業側に明らかな悪意があれば、ブラックでしょう」

ブラック企業アナリストの新田龍さんの定義は
「企業規模を問わず、明らかに違法性があり、それを改める気がない企業」
違法行為を強要する。
明らかなパワハラやセクハラがある。
度を超した長時間労働やサービス残業の強要も違法行為にあたる。

「ですが、新入社員から『自分の会社はブラック企業では?』と相談を受けたなかで、私がブラックと認識したケースはごく少数。ほとんどは、単なるミスマッチなんです」
(新田さん)

AERA 2014年6月23日号より抜粋