「今年は蚊に刺されない」。

人々の口から、こう不思議がる声が聞かれる。
大阪府が10年以上にわたり府内で蚊の種類などを調べるために捕獲している蚊の数も、近年は減少傾向にある。

この夏、大阪だけでなく各地で35度を超える気温を記録。

専門家によると、猛暑になると、卵を産む場所の水たまりが干上がるほか、成虫でも生命を維持することが困難になるという。
かつて夏と言えば、蚊に刺されることが、花火やかき氷などとともに季節を感じさせる「風物詩」だったが、それが変わりつつあるのだろうか。(張英壽)

 

 

 


■「1回もありません」

大阪ミナミの南海なんば駅前広場。喫煙所が設置され、木々や植栽もある。
今月の真夏の日暮れ、集まった人たちに「最近蚊に刺されたか」と聞いてみた。
「今年は1回も刺されていません。言われてみて、気づきました。もともとよく刺されるほうで、例年汗をかくと刺される。今年はいつもよりも汗を多くかいているのですが」

大阪府和泉市の専門学校生の女性(44)はそう答えた。

大阪市西成区のパート従業員の女性(54)は
「何十年も前と比べたら蚊は少なくなっていると思う。
刺されたら、赤くなってぷくっと膨らみができるが、歩いてる人を見ても、そんなのはない。今の蚊は弱いのかな」
大きな木が近くにあったが
「こんな木の下でも虫はいないね」と話した。

確かになんば駅前で観察すると、行き交う薄着の人たちに、はっきりわかる蚊に刺された痕はない。
植栽や木の近くに立っても、蚊は飛んでいなかった。

このほかにも、兵庫県伊丹市の女性会社員(27)が
「例年十数回刺されるが、今年は3回くらい」大阪市の男性会社員(52)が「子供のころは刺された。いまの家は一戸建てだが、今年はあんまり刺されない」という。